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日外会誌. 101(10): 713-716, 2000


特集

Day Surgery

5.乳癌に対する Day Surgery

癌研究会附属病院 乳腺外科

高橋 かおる , 斉藤 光江 , 蒔田 益次郎 , 多田 隆士 , 内田 恵博 , 吉本 賢隆 , 霞 富士雄

I.内容要旨
米国における乳癌のday surgeryは,乳房温存手術,乳房切除術の両者を含む全麻手術が主体であるが,保険制度や国民性の異なる日本では,全麻下の乳癌手術を日帰りで行うメリットは少なく,現在ほとんど行われていない.全麻手術に関しては,入院期間の短縮を考える方が先決で,これは日本でもある程度可能と思われる.現在わが国で行われている乳癌day surgeryは,主に局麻下の乳房部分切除術であり,この結果,断端陰性,浸潤(一)の症例では入院手術が不要となる.このような方法をわれわれはprobe lumpectomyと呼んでおり,1998年までに169例に施行,大きな合併症はなかった.非触知乳癌または平均腫瘤径14mmの小さな乳癌が対象となり,最終的に64例が外来のみで治療終了となった.観察期間平均42カ月で,乳房内の新生多発癌の発生2例を認めたが,遠隔再発はない.また,センチネルリンパ節生検の出現で乳癌のdaysurgeryの適応範囲の拡大が期待されているが,アイソトープの使用やセンチネルリンパ節の存在部位の問題から,局麻下でのリンパ節生検には限界があり,むしろ,リンパ節郭清省略による入院期間の短縮に寄与する手法ではないかと考えている.乳癌手術は急速に縮小化がすすんでおり,それに伴ってday surgery症例は今後増加すると思われるが,あくまで悪性疾患であることを忘れてはならず,治療負担の軽減が,疾患自体の軽視につながらないよう,インフォームドコンセントや患者教育および医師の側のフォローアップ体制にも,十分な注意が必要であろう.

キーワード
乳癌, day surgery, 乳房部分切除術, probe lumpectomy, センチネルリンパ節生検

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