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日外会誌. 101(9): 593-601, 2000


特集

新しい免疫の啓蟄-外科学とのかかわり-

4.移植外科と免疫制御

東京大学医科学研究所先端医療研究センター 免疫病態分野

森本 幾夫 , 岩田 哲史

I.内容要旨
臓器移植は現在,心臓,肝臓,腎臓疾患で末期状態に陥っている患者を救う手段として欧米では治癒を目指す確立した治療手段として幅広く用いられている.
拒絶反応を抑えるためにシクロスポリンAやタクロリムス(FK506)を始めとする新しい免疫抑制剤が登場し,それらが移植成績向上に貢献した功績は大である.しかし依然としてこれらの薬剤も完全には有効でない症例もあり,また日和見感染症の危険性やその他の副作用の危険性も高く,臓器移植がより広く用いられるためには,さらに改善すべきことは数多く残されている.
免疫系は生体防御機能に関わっているが,T細胞が中心的役割を果たしている.この免疫系の中心的役割を担うT細胞は自己と非自己を認識できるように胸腺において教育されるがT細胞が移植抗原を非自己と認識し,活性化されることにより移植臓器に対する拒絶反応が生じる.T細胞の活性化にはT細胞受容体の抗原認識のみではT細胞活性化には十分でなくその際に共刺激シグナルを同時に受け取る必要があり,そのシグナルを受け取れない場合はその抗原に出くわす際,T細胞活性化に抵抗性(トレランス)を示す.
このT細胞共刺激を抑制することは移植片への抗原特異的トレランスを誘導する手段となりうる可能性がある.特にCD28及びCD40共刺激細胞の抑制はねずみや,霊長類において移植拒絶反応の抑制に非常に有望な結果が得られている.本稿においてはヒト免疫機構,T細胞共刺激及びそれを用いての移植外科における免疫制御の現状について概説する.

キーワード
T細胞サブセット, 共刺激分子, CD28/CTLA-4 (CD152), CD40/CD40ーL (CD154)


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