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日外会誌. 101(9): 582-587, 2000


特集

新しい免疫の啓蟄-外科学とのかかわり-

2.外科侵襲とサイトカイン

防衛医科大学校 第1外科

小野 聡 , 望月 英隆

I.内容要旨
外科領域で生体に加えられる侵襲には種々のものがあるが,いずれの侵襲が加わった場合にも生体は,呼吸,循環,代謝,そして免疫などの機能を大きく変化させ,侵襲に対しての恒常性維持反応を引き起こす.外科領域では皮膚や粘膜の切開による感染防御機構の破壊や腹膜炎等の感染性疾患との遭遇が不可避であるため,特に免疫系の役割は重要で,単球・マクロファージ,リンパ球や好中球などが中心的役割を果たしている.なかでもこれらの細胞から産生されるサイトカインは,多彩な生理活性を有し,お互いが複雑なネットワーク機構を形成しながら恒常性維持に関与している.つまり侵襲が生体に加わると,TNFα,IL-1,IL-6,IL-8などの炎症性サイトカインが産生され,体温の上昇,脈拍数や白血球数の増加などを来たし,臨床的にSIRSと呼ばれる状態になる.一方生体内ではこの全身性の炎症反応に対して抗炎症性サイトカインであるIL-10や内因性のサイトカイン拮抗物質であるIL-1 receptor antagonist(IL-1ra),TNF receptor 1(TNFR-1)などを産生し,炎症反応を抑えようとする.しかし炎症反応が特に顕著であったり,逆に抗炎症反応が過度な場合にはその後重篤な病態に陥り,severe sepsisやseptic shockさらにはMODS(multiple organ dysfunction syndrome)へ移行することがある.本稿では,外科侵襲が生体に加わった場合の単核球系細胞でのサイトカイン産生及びMHC class ll 抗原であるHLA-DR発現の実態について,またIFNγ, IL-2などのTh1サイトカインと, IL-4, IL-10などのTh2サイトカインの反応及び両者のバランスについて,免疫機能の観点から自験結果を踏まえ解説した.また過大侵襲が加わった場合の免疫機能維持には,サイトカイン制御を介した対応の必要性を指摘したい.

キーワード
単核球形細胞, HLA-DR, Th1サイトカイン, Th2サイトカイン


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