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日外会誌. 101(8): 556-560, 2000
特集
内視鏡外科の基礎と臨床
8.泌尿器疾患
I.内容要旨最近,泌尿器科領域においても腹腔鏡下手術の有効性,安全性,術後回復の早さが実証され,中には標準術式として確立された手術もある.触知不能の停留精巣症例における腹腔内精巣の有無の診断目的の腹腔鏡は,泌尿器科領域では最も早くから行われていた手技であるが現在もその有用性は確立されている.最近では一期的あるいは二期的に腹腔鏡を用いた精巣固定術も行われている.また精索静脈瘤に対する腹腔鏡下内精索静脈高位結紮術は,現時点では全身麻酔が必要で再発率がやや高い点で局所麻酔下の低位結紮術に劣ると考えられるが,将来日帰り手術が主流になれば術創が最も小さい本術式のメリットが見直されるかも知れない.副腎腫瘍に対する腹腔鏡下副腎摘除術は開腹手術よりも優れており,もはや標準術式として確立されているが,副腎腫瘍が比較的稀な疾患であるためトレーニングの機会が限られるのが難点である.腹腔鏡下腎摘除術も腹腔鏡下手術の低侵襲性が生かされた手術であるが,遊離した腎の摘出法は確立しておらず,また現在は良性腎疾患のみが保険適用となっている.今後,腎癌,腎孟尿管癌に対する腹腔鏡下手術の是非についての議論が十分尽くされ適切な症例選択がなされれば,腎癌および腎孟尿管癌に対する腎摘除術の標準術式となる可能性がある.前立腺癌に対する腹腔鏡下前立腺全摘除術は,最近のフランスでの好成績に刺激されてわが国でも試みられつつあり,今後発展するのは確実である.手技に熟達し手術時間の短縮を図るためにはある程度症例数が期待できる手術でなければならないが,泌尿器科的にありふれた疾患に対する腹腔鏡下手術が発展しつつある現状をみると将来の展望は明るいと思われる.
キーワード
腹腔鏡下手術, 泌尿器科疾患, 後腹膜腔
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