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日外会誌. 101(8): 526-530, 2000


特集

内視鏡外科の基礎と臨床

2.内視鏡外科における癌の増殖・進展・転移

大分医科大学 第1外科

北野 正剛 , 白石 憲男

I.内容要旨
1991年以降,大腸癌や胃癌などの消化器癌に対する腹腔鏡下手術が行われてきた.手術は,癌を体外に排除する最も有効な手段であるが,一方,生体にとっては人工的外傷であり,外科的侵襲として作用する.外科的侵襲は,視床下部一脳下垂体一副腎系や循環血液量/血清浸透圧/化学受容体系等の生体反応を励起し,免疫能の低下をまねく.このような生体反応についての研究の結果,腹腔鏡下手術は従来の開腹手術に比べ,術後の生体反応や免疫能の低下が少ないことが示されている.一方,腹腔内局所において,気腹は,腹腔内の中皮細胞へ直接的な障害を与え,いわゆる損傷一治癒反応を生じることが明らかにされた.
このような手術に伴う生体反応や損傷治癒が癌の増殖・進展・転移にどのような影響を与えるかということを担癌動物を用いた実験系にて明らかにしようという試みがなされている.その結果,腹腔鏡下手術では,開腹術に比べ,術後の腫瘍増殖や転移における効果が少ないことが示された.一方,局所効果として,創転移が腹腔鏡下手術で高頻度に生じることが報告されている.腹腔鏡下手術の気腹操作による腹腔内環境の変化と創転移の関係を明らかにし,その予防法の開発が急務である.
本稿では,腹腔鏡下手術における生体反応や腹腔内の損傷治癒が癌の増殖・進展・転移にどのような影響を及ぼすかについて,文献と我々の研究結果より,概説する.

キーワード
内視鏡外科腫瘍学, 外科侵襲, 癌の増殖, 創転移, 血行性転移


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