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日外会誌. 101(7): 499-502, 2000


特集

QOLから見た呼吸器外科

6.気管形成術

慶應義塾大学 医学部呼吸器外科

小林 紘一

I.内容要旨
各種の原因による気管病変は咳,痰,血痰や気管狭窄症状を来たし,患者のQOLを低下させ,時に致命的になることもある.
気管形成術はこれらの問題を解決する有力な治療手段である.
当院で行われた気管形成術は109例である.このうち腫瘍性病変が83例で,原発性気管腫瘍が13例で11例は悪性腫瘍であった.このうち7例が腺様嚢胞癌であった.腺様嚢胞癌の7例のうち5例は断端陽性であり,6例に術後放射線治療を行った.非治癒切除に終わった症例でも術後13年10月で原病死した症例や術後20年生存している症例もある.隣接臓器の悪性腫瘍の気管への浸潤は70例でこのうち64例が甲状腺癌からの浸潤であり,腫瘍が完全に切除できた症例34例の5年および10年生存は79.4%,75.6%で,非治癒切除に終わった30例の5年および10年生存は52.8%,35.5%であった.
非腫瘍性疾患26例では気管切開後または挿管後狭窄が15例,外傷9例,先天性および結核性狭窄が各1例であった.これらの症例では概ね良好な結果が得られたが,結核性狭窄や熱傷後の狭窄で気管軟骨の変性が強い症例では術後再狭窄を来たし,気管切開口の閉鎖が困難であった.
以上のように,気管形成術は患者を気道症状から開放しQOLを改善し,気管狭窄による窒息死に対する根治的な治療法として確立されている.

キーワード
気管形成術, 端々吻合, 腫瘍性病変, 非腫瘍性病変, 甲状腺癌気管浸潤


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