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日外会誌. 101(6): 459-463, 2000


特集

下部直腸癌における機能温存手術の適応と限界

6.下部直腸癌に対する肛門温存手術-特に,排便機能障害への対策を指向した再建法の工夫

弘前大学 医学部第2外科

森田 隆幸 , 鈴木 純 , 吉崎 孝明 , 木村 寛 , 中村 文彦 , 伊藤 卓 , 村田 暁彦 , 西 隆 , 小山 基 , 佐々木 睦男

I.内容要旨
肛門括約筋機能温存手術の下部直腸癌への適応拡大が図られるに従い,術後排便機能障害への関心が高まってきた.特徴的な術後の症状は排便が始まると1~ 2時間の間に起こる少量ずつの不規則な排便,下剤を必要とする頑固な便秘,また括約筋機能不全によるsoilingや便失禁などである.その病態には,1)肛門管静止圧の低下,2)直腸complianceの低下,3)肛門管の知覚障害,4)吻合部口側腸管の異常律動運動(spasm),5)吻合部口側腸管の輸送能の低下などの要因が関与している.術後排便障害の軽減もしくは改善を図るため歯状線近傍での吻合が行われる症例には結腸J-pouchを作製しての再建が行われるようになった.結腸J-pouch作製の臨床的意義を検討すると,排便回数はストレート吻合症例と差は認めないものの,J-pouch作製群での患者自身の満足度は高く,それには排便時のすっきり感や排便を我慢出来る時間(耐便時間)などの因子が関与していた.さらに,直腸肛門内圧検査や大腸輸送能検査で比較すると,J-pouch作製群では吻合部口側腸管の異常律動運動が軽減されること,吻合部口側腸管,特に横行結腸左側から下行結腸にかけての腸管内容の通過がスムーズになりpouchの貯留能もみられることが明らかになりつつある.今後,どのような再建術式を行えばより良好な術後排便機能が得られるのか検討することが求められよう.

キーワード
直腸癌, 肛門温存手術, 術後排便障害, 結腸J-パウチ, transit study


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