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日外会誌. 101(6): 454-458, 2000


特集

下部直腸癌における機能温存手術の適応と限界

5.肛門温存手術-経肛門的結腸肛門吻合術-

東邦大学 医学部外科学第1講座

寺本 龍生

I.内容要旨
近年,器械吻合法の導入により下部直腸癌でも括約筋温存手術(SPO)が容易に行なわれるようになった.しかしながら安全な肛門側断端を確保するためには肛門管直上あるいは歯状線で切離しなければならない症例では器械吻合を断念せざるを得ない.このような症例に対しては吻合が低位であるほど容易な経肛門的結腸肛門吻合術が適応とされる.また腹腔側より正確に肛門側断端を決定し得ない症例では,あらかじめ経肛門的に直視下に肛門側断端を離断し,さらに直腸を授動しておき,腹腔側より直腸切除後に,経肛門的結腸肛門吻合術を施行するPer anal lntersphincteric Dissection and Coloanal Anastomosis(PIDCA)が適応とされる.本術式後に便失禁を訴えた症例はなく,排便回数も結腸嚢造設症例では術後9カ月経過すると,一日3~4行にまで回復し,遠隔成績では治癒切除例の累積5年生存率は69.6%と同時期の直腸切断術の55.1%と比較して差を認めなかった.本術式は解剖生理学的に括約筋を温存できる限界の術式である.

キーワード
下部直腸癌, 括約筋温存手術, 経肛門的結腸肛門吻合術, PIDCA

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