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日外会誌. 101(5): 413-417, 2000


特集

肝門部胆管癌-診断と治療の進歩-

7.肝門部胆管癌に対する肝切除術(縮小)

千葉大学 医学部第1外科

宮崎 勝 , 伊藤 博 , 中川 宏治 , 安蒜 聡 , 清水 宏明 , 吉留 博之 , 中島 伸之

I.内容要旨
肝門部胆管癌の外科切除率は肝切除の併施により著明に向上したが,その一方術後合併症発生率の増大を持たらした.それに対し術前門脈塞栓術による,肝不全予防対策が試みられているが,術後肝不全発生率は切除肝体積に依存する事より肝門部胆管癌の切除に際し,必要最小限の肝切除により根治切除が無し得れば術後合併症発生を回避しうるものと考え,我々は癌進展度に応じ,また肝および全身状態を含めたリスク因子に応じて出来る限り肝実質を温存した肝切除術を選択している.そこで肝実質温存切除術の適応と意義について検討した.93例の肝門部胆管癌切除例を肝門部胆管切除(LR)群(n=13),拡大肝葉切除(EXH)群(n=66),肝実質温存切除(PPH)群(n=14)の3群に分け比較した.PPH群はS1切除10例, S1+S4切除4例である.治癒切除率はEXH群, PPH群は71%,93%とLR群38%に比し有意に高値であり,特に肝側胆管断端の癌陽性率(hm)はEXH群, PPH群では20%,7%とLR群54%に比べ著明に低率であった.術後合併症発生率はEXH群48%とLR群8%, PPH群14%に比し有意に高く,特に高ビリルビン血症の発生率はEXH群で29%であったのに対し, PPH群では0%と有意に低値であった.全切除例をLR群とEXH+PPH群に分け5生率をみると5% vs 29%と肝切除群で有意に良好であったが,治癒切除例においてEXH群とPPH群を比較すると5生40%と38%と差異はみられていない.予後を多変量解析すると治癒切除,リンパ節転移,血管合併切除の3因子が独立した予後規定因子であった.PPHは的確な適応に従って行えば術後合併症発生を防止し,根治手術を行い得,予後向上に寄与しうる術式となりうると考えられた.

キーワード
肝門部胆管癌, 肝切除, 肝実質温存切除術


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