[書誌情報] [全文PDF] (2655KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 101(5): 386-392, 2000


特集

肝門部胆管癌-診断と治療の進歩-

2.肝門部の局所解剖

三重大学 医学部第1外科

田岡 大樹 , 川原田 嘉文

I.内容要旨
肝門部胆管癌を手術する上で重要な肝門部の局所解剖は,肝門部脈管変位がplate systemの中で多いことから,plateの背側または内部に走行している脈管の位置ならびに走行異常を理解することである.plate systemは, hilar plate, cystic plate, umbilical plateの3つから形成され,肝外脈管系の腹側面を覆う板状の厚い結合織であり,胆管と動脈はplate systemにつけたまま門脈と剥離可能である.このplate内には,多数のリンパ管,交感神経が複雑に出入し,さらにhilar plateの上縁はS4a肝被膜と連続し,この移行部を肝表在リンパ流が流れているため,肝切除の際,これらを一塊として切除することが局所再発を防ぐ上で重要である.一般に,plate systemを貫通した脈管群は,直ちに肝実質内でGlisson鞘を形成し,これらplateとGlisson鞘は連続しているが,尾状葉枝と内側区域枝は例外で,plate直下ではGlisson鞘を形成していないことに注意すべきである.肝門部での各脈管の変位を検討すると,右側胆管系では通常型は53~72%に認め,前区域枝右側合流型;9~24%,3枝合流型;7~ 14%,後区域右側合流型;6~9%である.左側胆管系では,B4が肝門部近傍に合流するtypeを35.5%に認め,肝門部胆管癌症例ではこれら症例は尾状葉胆管枝と同等に取扱う必要がある.一般に門脈では走行異常は少なく標準型;74~84%,3枝分岐型;8~12%,前区域枝門脈左枝分岐型;9~17%の順である.逆に動脈は走行異常が多く,標準型;67~69%,右肝動脈SMA分岐型;13~14%,左肝動脈左胃動脈分岐型;11~12%,全肝動脈SMA分岐型;2.0~4.5%の順である.肝門部胆管癌手術に際して,これら門脈,動脈走行異常例では胆管変位も多い事も銘記する必要がある

キーワード
肝門部胆管癌, plate system, 肝門部脈管変位, 内側区域脈管構築, 尾状葉脈管構築

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。