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日外会誌. 101(4): 368-372, 2000


特集

食道アカラシアにおける治療最近の動向

10.食道アカラシアに対する胃弁移植術 (Gastric Patch original) の術式の反省と新しい術式 Gastric Patch ll・lllの評価

千葉大学 医学部光学医療診療部

神津 照雄 , 宮崎 信一 , 吉村 清司 , 菱川 悦男 , 海宝 雄人

I.内容要旨
食道アカラシアに対する治療法は,時代的経過と共に様々なModalityの変遷が報告されてきた.そのなかでも外科手術に関しては粘膜外筋切開Heller’s myotomyを基本操作とする種々のantirefulux procedureを加えた手技がある.筆者らが教育を受けてきた千葉大学第2外科の施設では1968年からesophagocardioplasty with gastric patch (Gastric Patch original-GP original)を第一選択術式として施行してきたが,術後の合併症とくに逆流性食道炎の原因を検討した結果,早期発生症例の検討から酸分泌能を有する有茎全層胃弁を縦隔内に挿入したことによる酸分泌に問題であること原因と判明した.そこで縦隔内に酸分泌を有する胃粘膜を移植しない新しい外科手術法を1989年に開発し,その評価をおこなってきたので報告する.手術の出来上がりはGastric Patch originalとその変法であるGastric Patch ll・IIIと全く同様である.Gastric Patch ll・IIIの臨床的な成績でみると,X線上での食道の拡張度の変化を術前後で比較すると,平均観察期間7.1カ月で5.2 ± 1.0cmから2.9 ± 0.6cmに食道の拡張が改善された.症状の改善については23例,全例で嚥下障害の消失を認めた.術後の逆流性食道炎は初期に行ったGPIIの2例に下部食道に1cm未満の軽度な発赤を認めたが,最長8年の経過観察で逆流性食道炎の増強は見られなかった.その他の症例では内視鏡的に逆流性食道炎は全く認めなかった.手術前後の体重の増減の検討では不変8例,減少1例,増加14例で平均11.8カ月に5.5 ± 3.0kgの増加が見られ,その後は殆どの症例が手術前の体重に回復した.食道内圧検査の結果ではLESPは術前の55.2 ± 14.7cmH2Oから術後は35.4 ± 9.1cmH2Oに減少した.この変化はGPIIが施行された7例とGPIIIが施行された16例の間に有意差は見られなかった.術前後のHPZのlengthは2.7 ± 1.1cmから2.2 ± 0.7cmに変化したが,GPIIとGPIIIの間に差は見られなかった.

キーワード
Achalasia, Cardioplasty, open surgery, LESP

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