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日外会誌. 101(3): 307-310, 2000


特集

未来のための今

IV 特別企画「Sentinel Node Navigation Surgery-がん低侵襲手術の新たなる展開-」
1.Sentinel Node Conceptと癌治療への応用

金沢大学 医学部第2外科

三輪 晃一

I.内容要旨
その癌が,リンパ節転移をもつか否かを切除前に知ることは,術式の選択のみならず,患者の予後を知るうえにも重要である.癌が最初に転移するリンパ節すなわちセンチネルリンパ節に転移がなければ,他の所属リンパ節にも転移がないとするのが“Sentinel Node Concept”である.この概念は担癌生体に低侵襲で上記の目的を果す合理的な方法として受け入れられている.この概念の導入は,徹底したリンパ節郭清が術後の重篤な合併症につながる陰茎癌の鼠径部郭清を嚆矢として,陰唇癌・悪性黒色腫・乳癌へと広がった.これらの癌では,鼠径部あるいは腋窩のリンパ節が郭清され,徹底すると当該四肢に難治性浮腫をきたし,術後のQOLが著しく障害されることで知られている.それだけに転移の有無の診断が,治癒率や術後障害に大きな影響をもつ癌である.これまでに,センチネルリンパ節生検による縮小手術の適応決定が行われている癌は上述の臓器に限定されているが,リンパ節郭清が過大侵襲につながる食道癌,術後のQOLの低下につながる胃癌や直腸癌などへのSentinel Node Conceptの導入が期待されるのである.縮小手術適応決定以外に,センチネルリンパ節生検には,癌治療へのいくつかの応用の可能性が考えられる.そのひとつは,リンパ節郭清の有効性の評価である.胃癌をはじめ多くの臓器癌のリンパ節郭清には,日本と欧米との間に考え方に違いが見られる.日本ではリンパ節郭清は治療を目的としているが,欧米では治療法を選択するためのステージ決定に意義があるとし,治療的な価値を認めていない.東西のこの相違を解消するには,Sentinel Node Conceptの導入は有用な媒体となる可能性を秘めている.そのほか,微小リンパ節転移検出や,いわゆる跳躍転移の診断への応用も期待される.

キーワード
センチネルリンパ節, リンパ節郭清, 縮小手術, 微小転移, 跳躍転移

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