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日外会誌. 100(12): 801-805, 1999


特集

大腸早期癌に対するminimally invasive surgeryの基礎と臨床

8. 早期直腸癌に対する腹腔鏡下手術

帝京大学医学部附属溝口病院 外科

宮島 伸宜 , 山川 達郎

I.内容要旨
早期直腸癌に対する腹腔鏡下手術の適応,手技および成績について述べた.粘膜内癌では内視鏡的切除あるいは経肛門的操作では切除不可能な症例が適応である.粘膜下層浸潤症例では,リンパ節郭清が必要になるため腹腔鏡下手術手術がよい適応になる.リンパ節郭清は,粘膜内癌あるいは粘膜下層にわずかに浸潤している腫瘍ではD1郭清行う.粘膜下層に深く浸潤していると判定された腫瘍ではD2あるいはD3郭清を行うことを原則としている.部位としてRsあるいはRaに腫瘍が存在する場合には腹腔内からのみの操作で手術を完遂することが可能である.腸間膜の剥離,リンパ節郭清に続いてEndoGIA IIを用いて直腸を切離した後,左下腹部を小開腹して口側腸管を体外に引き出して切離する.次いで自動吻合器のanvilを装着して腹腔内に還納し,再気腹した後肛門から挿入した自動吻合器の本体と接続してdouble stapling techniqueを用いて吻合を行う.腫瘍がRbの低位直腸に存在し,腹腔内操作で切離不可能な場合には腸管の剥離とリンパ節郭清を行った後に腹膜翻転部を切開して肛門挙筋に至るまで小骨盤腔内を剥離する.次いで肛門側からの操作に移り,歯状線直上で直腸粘膜を切開し,内外括約筋間を剥離として口側に向かい,肛門挙筋を剥離して腹腔内と連結させる.腸管を肛門側から引き出し,結腸を適切な部位で切断し,J-pouchを作成して経肛門吻合を行う.1998年12月までに47例の直腸癌に対して腹腔鏡下手術を施行した.手術時間は1時間25分~ 4時間35分で,術後の鎮痛剤投与回数は少なく,また腸管蠕動の回復に伴う胃管抜去時期,経口摂取開始時期も早く,入院期間も短縮された.術中偶発症,縫合不全も経験していない.また術後最長で6年を越えた時点で,再発例はない.以上より直腸早期癌に対する手術的治療は,腹腔鏡下手術が第一選択になりうるものと考えられた.

キーワード
早期直腸癌, 腹腔鏡下手術, sm癌, double stapling technique, 経肛門操作

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