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日外会誌. 100(12): 766-775, 1999


特集

大腸早期癌に対するminimally invasive surgeryの基礎と臨床

2. De novo cancerとadenoma-carcinoma sequenceについて
-大腸癌の組織発生とその臨床病理学的意義-

東京医科歯科大学 医学部病理学講座

中村 恭一

I.内容要旨
癌腫とは『細胞分裂時に生じた突然変異細胞が生体から排除されずに細胞分裂を繰り返して増殖し,それを放置しておけば宿主を死に追いやる細胞塊』のことである.したがって,癌細胞は上皮細胞が分裂している場で発生していることは明らかであり,大腸癌もまた粘膜で発生している.大腸で上皮細胞の分裂が行われている場は,上皮若返りのために細胞分裂が行われている腺管の下1/2の細胞分裂帯と腺腫上皮である.したがって,癌はその細胞分裂帯と腺腫で発生していることになる.大腸癌組織発生とは,直接粘膜から発生する癌(de novo癌)と,腺腫の癌化による癌(腺腫由来癌)との割合についての主張である.現在,大腸癌の組織発生についてはMorsonらによるadenoma-carcinoma sequence(腺腫一癌連続説)「大腸癌の殆どすべては腺腫の癌化したものである』が世界で一般的に受容されている.この学説は,大腸癌の組織学的定義『粘膜下組織における異型度著明な腺管を癌とする』を前提として導かれたものである.この定義には腫瘍病理学の大前提でもある癌腫の定義の無視があり,さらにはこの学説から実際における腺腫一癌関係の臨床病理学的なことを眺める時,そこからは多くの矛盾と奇妙な現象が浮上してくる.ということは,この学説は明らかに論理的に誤りであることになる.そうすると,大腸癌の組織発生は大部分が所謂正常粘膜から直接発生するde novo癌であることになる.なぜならば,大腸癌の発生母地となる上皮の大部分は所謂正常上皮と腺腫上皮であるからである.この癌組織発生からは矛盾などは解消し,さらにはde novo癌と腺腫由来の癌との生物学的振る舞いの違いを明瞭にすることができる.

キーワード
de novo癌学説, adenoma-carcinoma sequence, 癌組織発生, 癌浸潤率


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