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日外会誌. 100(11): 700-704, 1999


特集

肺癌治療の最近の進歩

2. 肺癌の新TNM分類の問題点

徳島大学 医学部第2外科

近藤 和也 , 門田 康正

I.内容要旨
1997年6月に肺癌のTNM分類が改訂された.主な4項目の改訂点について,問題点を述べる.1)I期をIA期(T1N0M0)とIB期(T2N0M0)に分けた.本邦のIA期の5年生存率は72~83%でIB期は53~71%で,I期をIA期とIB期を分けることは,妥当であると考えられる.2)II期をIIA期(T1N1M0)とIIB期(T2N1M0)を分けた.本邦の報告ではIIA期の症例数の一番多いところでも54例で,5年生存率は37-68%で,T2N1M0群は38~47.8%で, T1N1M0群の症例数が少なく,多施設問での症例を蓄積し検討する必要がある.3)T3N0M0をStage IIIAよりStage IIBに移行した.本邦の報告ではT3N0M0群の5年生存率は44.2~30%,IIIA期は23~16%で, IIB期への移行は妥当と思われる.T3症例は隣接臓器への浸潤を含むheterogenousなグループであり,壁側胸膜のみの浸潤群,主気管支浸潤群,葉間T3群は予後良好であるのに対して,肋間筋・肋骨への浸潤群,横隔膜浸潤群は予後不良であり,T3,T4の区分はさらに検討する必要がある.4)肺内転移に関して,同一葉内の肺内転移(pm1)はT4に,それ以外の場合(pm2)はM1に分類した. pm1症例はIIIB期より予後は良好であり,pm1はT4よりT3とした方がよいとの考えがある.また,pm1症例ではN因子により大きく影響する可能性があり,IIIB期肺癌として一括して扱うことに問題がある.pm2症例の予後は悪くM1と分類することは妥当と思われる.pm1症例に施設問で予後の違いが著しい.1)肺内転移の検索精度の違い,2)多発肺癌が含まれている頻度の違いの2つが大きく影響している可能性がある.

キーワード
肺癌, 新TNM分類, T3症例, pm症例


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