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日外会誌. 100(10): 683-688, 1999


特集

ショックを見直す

10.ショックと急性臓器不全

杏林大学 医学部救急医学

村田 厚夫 , 菊地 充 , 行岡 哲男 , 島崎 修次

I.内容要旨
多発外傷,出血,敗血症からショックになり,そのショックが制御されないと生体は容易に臓器機能不全に陥る.その機序は各種液性因子の関与が示唆されているが,未だ臨床的成績は芳しくない.生体に侵襲が加わると,炎症反応は連続的に進行する.多くの場合,まず生体はショックという循環動態を示し,それに続いて,腎機能障害,呼吸障害,中枢神経系障害,そして肝機能障害と言うパターンをとる.侵襲に対する生体反応は防御反応であり,臨床的には循環動態の安定化,代謝の改善,免疫力の賦活が集中治療の中心である.
循環動態の安定化はカテコラミン投与や輸血などによる重要臓器組織への酸素供給の増加が主な目的であるだけでなく,損傷を受けた組織修復にも大切である.過度の侵襲が加わった生体はcatabolismが亢進しており,適切な栄養補給により代謝の改善を図ることが基本であり,栄養投与ルートは出来る限り消化管を利用することで,消化管粘膜の萎縮を防ぐことが出来,それがbacterial translocationを予防することにもなる.免疫力の賦活は代謝の改善などと相まって過度の侵襲が加わった生体の感染に対する防御能を高め,second hitとしての感染症発症を抑えることにより臓器機能障害を防ぐことにもつながる.また,適切な抗生物質投与,invasive monitoringの省略化も,このようなcompromised hostの集中治療には必要な知識でもある.
本稿では,外傷や敗血症から急性臓器不全に陥る機序を中心に解説し,ショックから臓器機能不全に至る過程での一般的な対策についても概略する。

キーワード
ショック, 急性臓器不全, SIRS, CARS, 酸素供給

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