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日外会誌. 100(10): 667-673, 1999


特集

ショックを見直す

7.ショックとメディエータ

熊本大学 医学部第2外科

広田 昌彦 , 小川 道雄

I.内容要旨
ショックは一般的には動脈圧の低下を診断基準とするが,その病態は単に循環系の異常にとどまらず,臓器障害へと発展する複雑な全身反応である.ショックの原因には種々のものあり,血行動態的にも異なったものが含まれるが,ショックが起これば微小循環障害や虚血一再灌流障害に基づく炎症反応として,サイトカインをはじめとしたメディエータが産生される.一方,敗血症や重症急性膵炎などの強い炎症時には,サイトカインの産生により全身性の炎症反応(SIRS)が惹起され,それが制御されずに増幅されるとショックへと進展する.
敗血症性ショックや重症急性膵炎に伴うショックなど,過度の炎症反応に基づくショックの場合は,サイトカインによる血管透過性亢進と一酸化窒素(NO)による末梢血管拡張が,ショックの主要病態である.また,エンドトキシン自体が強力なサイトカイン誘導能やNO誘導能を有しており,敗血症性ショック時には内因性メディエータに加え,外因性物質であるエンドトキシンもショックのメディエータ様機能を発揮する.
近年,メディエータを制御することにより,敗血症性ショックを治療しようとする試みがなされている.しかし,サイトカインは本来,生体防御反応として産生されているはずのものであり,メディエータの制御においては,その点についても十分な留意が必要である.現状ではサイトカインにより誘導,発現される好中球の中性プロテアーゼや活性酸素分子種の阻害の方が適切と考えられる.また,高サイトカイン血症により惹起される臨床徴候であるSIRSをショックや臓器障害発生のwarning signとしてとらえ,first attackの制御,及びsecond attackの予防に努めることが肝要である。

キーワード
ショック, サイトカイン, メディエータ, 敗血症性ショック, 重症急性膵炎

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