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日外会誌. 100(9): 547-550, 1999


特集

形成外科・最近のトピックス

7.Fascia sparing techniqueを用いた腹直筋皮弁による乳房再建

1) 蘇春堂形成外科 
2) 恵佑会札幌病院 外科
3) 北海道大学 医学部形成外科

野平 久仁彦1) , 新冨 芳尚1) , 細川 正夫2) , 矢島 和宜3) , 佐々木 了3) , 山本 有平3) , 杉原 平樹3)

I.内容要旨
自家組織を用いる乳房再建の中でTRAM(transverse rectus abdominis musculocutaneous)flapは現在のところ世界の標準術式ともいえる方法である.その理由は十分な組織量が利用できること,皮弁採取部である腹部の形態も改善できること,上下腹壁血管系をいろいろなバリエーションで用いることができること,などがあげられる.しかし腹壁の筋肉や筋鞘を使用するため,術後ヘルニアなどの防止には十分な配慮が必要となる.
われわれは筋鞘をほとんど付けないで皮弁を挙上するfascia sparing techniqueを定型乳房切除術後の3例,非定型乳房切除術後の7例の乳房再建に用いた.とくに定型乳房切除術後の症例では,両側の筋体を用いる血管吻合付加腹直筋皮弁による再建を行ったが,全例メッシュなどの人工物を用いずに筋鞘の一次閉鎖が可能であった.平均1年2カ月の術後経過観察中,ヘルニアや腹部の膨隆を来した症例はなかった.
筋鞘の一次閉鎖のためには筋鞘も筋肉も付けずに皮弁を挙上するDIEP(deep inferior epigastric perforator)flapも選択肢のひとつである.しかし穿通枝が細くてDIEP flapとして挙上するのが困難な場合がある.その点本法は,筋鞘は付けないが,血管周囲の筋肉は血管を保護するために最小限に付けて挙上するので,血管が細い症例にも安全に用いることができる.

キーワード
乳房再建, 腹直筋皮弁, 筋鞘温存, 腹壁ヘルニア, マイクロサージャリー


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