日外会誌. 100(8): 513-516, 1999


症例報告

腹腔鏡下に治療し得た肝鎌状間膜の異常裂孔に陥入した内ヘルニアの1例

静岡済生会総合病院 外科

小林 聡 , 寺崎 正起 , 久納 孝夫 , 岡本 恭和 , 坂本 英至 , 神谷 諭 , 篠原 剛 , 浅羽 雄太郎

I.内容要旨
症例は22歳,男性.上腹部痛を主訴に当院を受診.腹部超音波検査,腹部CTで前腹壁と肝外側区域の間に拡張腸管を認め,肝鎌状間膜の異常裂孔に嵌人した内ヘルニアを疑い,同日緊急手術を施行した.腹腔鏡下に観察すると,鎌状間膜の異常裂孔に右側から小腸が嵌頓していた.ヘルニア門を切開し,嵌頓を解除した後,再発を防ぐため肝円索を切離しヘルニア門を開放した.嵌頓小腸はviability良好で切除しなかった.術後経過は良好で術後4日目に軽快退院した.
鎌状間膜の異常裂孔に嵌入した内ヘルニアは極めて稀であり,本邦報告例は自験例を含め6例である.腹部超音波,CTでは特徴的な像を呈しており十分に術前診断可能であると思われる.手術は時期を逸さないように施行すべきであり,特に手術歴のない症例では腹腔鏡手術も有用であると思われた.

キーワード
内ヘルニア, 肝鎌状間膜, 腹腔鏡下手術


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