日外会誌. 100(8): 500-505, 1999
特集
大動脈瘤に対するステント人工血管内挿術
8.早期・中期成績
I.内容要旨当施設で1997年以後Endovascular Stent Graft Repairを施行した胸部大動脈瘤28例および腹部大動脈瘤11例の早期,中期成績を検討した.
早期成績:胸部大動脈瘤(真性7例,仮性3例,急性大動脈解離8例,亜急性解離4例,慢性解離6例)のうち破裂性感染性仮性瘤と破裂性急性大動脈解離の2例(7.1%)が死亡した.留置時合併症は出血を2例で,血管損傷,創部血腫を各1例で認めた.真性,仮性瘤の耐術9例は退院時endoleakなく瘤の血栓化が得られた.大動脈解離の耐術17例でも全例退院時endoleakなく,胸部偽腔の血栓化が得られた.腹部大動脈瘤では,Stent Graft(SG)による腎動脈閉鎖,腎および下肢末梢動脈の塞栓症,血管損傷を各1例で認め,破裂性で術前ショックとなっていた1例(9.1%)が死亡した.1例にendoleakが持続したが,退院時耐術10例で瘤の血栓化が得られた.
中期成績:遠隔期の死亡,心血管事故の発生を真性及び仮性瘤では平均16.8カ月,大動脈解離では平均9.5カ月,腹部大動脈瘤では平均8.7カ月の追跡期間で検討した.大動脈解離の1例が6カ月後異なった部位に解離を発症,腹部大動脈瘤では3カ月後に1例が肺炎にて死亡した.胸部真性及び仮性瘤の挿入6カ月後の最大瘤径は9例中,3例で縮小を認めたが,6例は不変で,うち1例は2年後に増大した.急性期または亜急性期にSGを挿入した大動脈解離9例中5例で6カ月後に偽腔は完全に消失,残る4例でも胸部偽腔はほぼ消失した.慢性期の4例は全例で6カ月後に胸部偽腔は血栓化を示したが残存した.腹部大動脈瘤の最大瘤径は5例中2例のみが縮小しており3例では不変であった.内1例はendoleakの残存と1年後瘤径の増大を認め,その後も増大傾向を認めた.
キーワード
Endovascular Stent Graft repair, 腹部大動脈瘤, 胸部大動脈瘤, 大動脈解離
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