日外会誌. 100(8): 474-477, 1999


特集

大動脈瘤に対するステント人工血管内挿術

2.手術適応(胸部・腹部大動脈瘤)

福島県立医科大学 医学部心臓血管外科

星野 俊一 , 石川 和徳 , 緑川 博文

I.内容要旨
1991年にParodiらが,腹部大動脈瘤に対するカテーテルを用いたステントグラフト内挿術(transIuminally placed endovascular graft:TPEG)を行った初めての臨床例を報告したのに続き,1994年のDakeらが胸部大動脈瘤に対し応用して良好な臨床結果を報告したことで,本法は大動脈瘤の新しい治療法として注目を集めた.現在では世界的に普及しつつあり,各施設で様々なステントグラフト(SG)を用いた臨床例の経験が重ねられている.
本法は,従来の外科的大動脈瘤置換術に比して低侵襲性であることから,当初,ハイリスク症例に対する治療法との意見が多くみられたが,安全性,有効性に関する成績が報告されるに従い,その適応は拡大されつつある.
しかし,SGを経カテーテル的に挿入し大動脈に圧着して固定する方法である本法は,縫合による固定とは全く異なり,その適応については慎重に考慮する必要がある.大動脈瘤に対するTPEGの適応の決定には,動脈瘤の病態および瘤形態を含む解剖学的要素が大きく影響し,重要分枝動脈が動脈瘤近傍に存在する場合には,その適応が大きく制限されることがある.今後のSGおよびデリバリーシステムの開発,改良により適応の変遷が十分予想されるが,現在までのところ,胸部では遠位弓部動脈瘤以下が,腹部では腎動脈下動脈瘤が主な対象となっている.大動脈解離に対する施行時期を含めた適応や有用性についての報告は少なく,一定の見解は得られていない.
教室では,1996年6月より自作のSGを用いて胸部あるいは腹部大動脈瘤症例,更には大動脈解離症例に対してTPEGを開始しており,本稿では,現時点での適応について述べる.

キーワード
ステントグラフト内挿術, 胸部大動脈瘤の適応, 腹部大動脈瘤の適応, 大動脈解離の適応, 対麻痺予防

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。