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日外会誌. 100(7): 419-423, 1999


特集

救急医療における最近の進歩

3.救急医療における栄養代謝

1) 帝京大学 医学部救命救急センター
2) 関西医科大学 救急医学科

長谷部 正晴1) , 鈴木 宏昌1) , 中谷 寿男2) , 小林 国男1)

I.内容要旨
救急医療の患者にとって栄養管理や代謝管理が治療上重要な意味をもつとすれば,その患者は単に経口摂取ができないというだけでなく,大きな侵襲を受けている.これらの患者は著しい蛋白異化と代謝失調を伴うため,十分であるはずの栄養を投与しても同化傾向に移行させることが難しい.この病態に対する解決策として最近行われてきた代謝栄養管理に関する研究内容は以下のように要約される.
栄養管理に関しては,栄養投与経路の選択,薬理学的あるいは特異的栄養素の効果,栄養評価と投与量,などに関する検討が中心で,それぞれが臨床疫学の手法により検証されてきた.その結果はA.S.P.E.N.ガイドラインのCritical Careの項に記載されている.具体的な方法は,できる限り経腸栄養を用いること,早期に栄養を開始すること,代謝量測定に基づく投与量の算定,特異栄養素の投与,などに要約される.グルタミンアナログや食物繊維も特異栄養素に相当するが,これらは経腸栄養でのみ補給できる栄養素である.このガイドラインに修正を加えるべき知見はその後も見当たらない.内容の詳細に関しては最近の本誌に特集されており,本稿では要点のみを示した.
代謝管理に関しては,そのモニタリングが重要である.著者らは,とくに代謝量,肝代謝能,さまざまな代謝指標に影響を及ぼす体液分布異常,の3点を評価し,代謝状態を把握することを試みてきた.間接熱量測定法による代謝量の実測は至適投与量を求めるうえで最も確実な手段であり,A.S.P.E.N.ガイドラインでも推奨されている.肝ミトコンドリアの酸化還元状態と相関する動脈血中ケトン体比(AKBR)は肝のみならず,全身の代謝状況を反映する.また,生体インピーダンスを多周波で測定,解析するBISA法は体液分布異常を推測するうえで有用である.本稿ではこれら3点に焦点を当てて述べた.

キーワード
重症患者, 代謝栄養管理, エネルギー消費量, 動脈血中ケトン体比, 生体インピーダンススペクトラム分析

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