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日外会誌. 100(6): 384-387, 1999


特集

最近の発生学研究が新生児臨床の進歩にもたらしたもの

5.Hirschsprung病(腸管神経発生とHirschsprung病)

名古屋大学 医学部小児外科

渡辺 芳夫

I.内容要旨
腸管の神経原基は胎生初期の腸管外に存在する神経堤に発現する(神経堤細胞).その後,神経原基は前腸から腸管壁内に入り込み,結腸へと遊走し,所定の場所で神経細胞に分化する.この分化の過程での異常がヒルシュスプルング病の発生に関与していると考えられる.近年,ノックアウトやトランスジェニックマウスといった遺伝子操作や組織培養およびキメラマウスを用いた腸管神経の発生に関する研究が可能となった.その結果,retプロトオンコジーン, glial-cell-line-derived neurotrophic factor, Mash-1,エンドセリン,Sox10等の遺伝子レベルでの異常によって無神経節腸管が生じることが証明された.一方,組織培養やキメラマウスを用いた実験によって,神経細胞内に組み込まれた遺伝情報だけではなく,神経外の環境因子の影響や細胞外の環境因子をコントロールする機能が腸管神経の形成に複雑に関与していることが証明された.今後,これらの研究成果の集積がヒルシュスプルング病やその他の原因不明の機能性腸閉塞症の診断や治療に応用されると考えられる。

キーワード
ヒルシュスプルング病, ノックアウトマウス, 神経堤細胞, 腸管神経, 細胞外因子

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