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日外会誌. 100(5): 342-346, 1999


特集

腹部臓器の虚血-病態の基礎と臨床-

5.膵臓の微小循環障害と虚血

東北大学 医学部第1外科

砂村 眞琴 , 渋谷 和彦 , 山内 淳一郎 , 武田 和憲 , 松野 正紀

I.内容要旨
毛細血管網が静脈系に流入する集合細静脈collecting venule領域は,壁ずり応力shear stressが最も小さく,白血球,リンパ球等と血管内皮細胞との反応の場として注目されている.膵炎モデルを用いた膵微小循環の観察では,初期変化は血管透過性の亢進であり,その変化はpostcapillary venuleにおいて最も顕著に認められ,bradykininやfree radicalsの関与が示唆されている.また,血管透過性の亢進によりヘマトクリット値が急激に上昇し,血液粘度の上昇が膵微小循環をさらに悪化させる原因となっている.gabexate mesilate(FOY)には血管透過性の亢進を抑制する作用が存在し,rolling白血球数を減少させた.重症急性膵炎モデルでは集合細静脈における白血球の接着が亢進するが,diamino-pyridine誘導体IS-741は白血球膜表面のインテグリンCD11b/18発現を抑制することにより接着白血球を減少させ,結果的に膵組織の炎症性変化を軽減させた.重症急性膵炎患者のCTでは膵実質の虚血性変化が描出されるが,同時に施行した血管造影検査では主要血管の閉塞は認められず,この虚血性変化の原因は膵微小循環系の障害に起因するものと考えられる.急性膵炎に対しては,膵微小循環系のホメオスターシス維持を目的とした治療法が有用と考えられる。

キーワード
膵微小循環, 急性膵炎, 白血球, 血管内皮, バイオレオロジー

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