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日外会誌. 100(5): 335-341, 1999


特集

腹部臓器の虚血-病態の基礎と臨床-

4.全肝血行遮断の有用性と問題点

京都大学 医学部消化器外科

嶌原 康行 , 寺嶋 宏明 , 佐藤 誠二 , 飯室 勇二 , 山本 成尚 , 山本 雄造 , 猪飼 伊和夫 , 森本 泰介 , 山岡 義生

I.内容要旨
肝流入血行および肝上部・肝下部下大静脈を同時に遮断する全肝血行遮断法は,通常の方法では切除困難な大血管に近接した腫瘍,下大静脈腫瘍栓,広範な門脈腫瘍栓,肝門部腫瘍,尾状葉腫瘍例などに対して安全かつ確実に肝切除を行うために適応される.血圧低下に対処するため,テストクランプと十分な輸液管理が必須である.下大静脈血・門脈血を上大静脈系にシャントするV-Vバイパス法は,全肝血行遮断中の循環動態の長時間の安定化,術後腎障害の防止,門脈鬱滞の回避などに有用である.また,肝虚血に伴う肝障害防止のために肝冷却灌流法を併施することもある.全肝血行遮断の許容時間は,肝障害の程度,門脈鬱滞の程度など多くの因子によって規定されるが,個々の症例で慎重に検討することが必要である.

キーワード
肝虚血, 全肝血行遮断, 肝切除, V-Vバイパス法, 肝冷却灌流

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