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日外会誌. 100(4): 269-272, 1999


特集

外科学 次代への展開

3.21世紀の外科教育:卒後外科教育

東京慈恵会医科大学 外科学講座第2

青木 照明

I.内容要旨
卒後外科教育における「次代への展開」を考えていく場合には,単に外科学という医学医療の一分野として考えていくべきものではなく,人間存在の根幹に関わる生命倫理および,全人類の生存を考慮した全世界的(グローバル)な見地よりみた社会学的発想が不可欠である.文明の急速な進歩・発展に伴い,生命の存在そのものに関する情報量は急速に増大し,それぞれの情報量を処理する専門家のニーズは高まりつつある.それは医学・医療においても同様である.しかしながら,生命の根幹に関わる医療の在り方においては,全人医療を目指した基礎をまず充分に備え,その人類愛に立脚した医療人の育成が必要である.外科学は,その意味においては,治療医学の最前線にあって幅広いプライマリーケア的能力と行動パターンを身につけておかねばならない分野の典型である.しかしながら,20世紀において我々が推し進めてきた外科教育はあまりにも細分化された専門分化した教育であり医学・医療の根幹を忘れ,技術とテクノロジーの進歩に押し流されてきている.
次代への展開を展望するとき,少なくともそのような膨大な情報量を分担し,フィードバックする専門家集団の必要性は否定できない.しかし,それがあまりにも細分化した状況においては,大きな弊害があることは既に顕在化している事実である.従って,少なくとも現状を分析し展望するとき,「外科専門医」は国家的,社会的ニーズの見地からはまず外科一般として,いわゆる基本的診療領域を分担する「一医師一専門分野」の観点から,現時点で分類されている内科,外科,小児科,泌尿器科,などの15分野程度に「専門医」の呼称分類がされた上でその教育が行われるべきである.それが国家的見地からみた場合の「専門医」が社会的にも経済的にも評価される医療機能分担者として卒後教育の目標となるべきものであろう.

キーワード
医学教育, 卒後外科教育, 基本的診療領域, 「専門医」, 「スーパースペシャリスト」


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