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日外会誌. 100(3): 257-260, 1999


特集

Barrett食道癌-基礎と臨床-

7.Barrett食道癌の手術とその遠隔成績

1) 国立がんセンター中央病院 外科
2) 国立がんセンター中央病院 内視鏡部
3) 国立がんセンター中央病院 研究所病理

坪佐 恭宏1) , 渡辺 寛1) , 加藤 抱一1) , 日月 裕司1) , 井垣 弘康1) , 山口 肇2) , 中西 幸浩3)

I.内容要旨
当院でのBarrett食道癌の手術例8例を報告するとともに,欧米および本邦の報告を参考にし主に手術術式と遠隔成績について検討した.当院のBarrett食道癌手術例の年齢は46~71歳(平均値:62.4歳)で女性は1例のみで,男女比は7:1となる.術式は右開胸4例,左開胸3例,経裂孔1例であり,頸部を含む3領域郭清を行ったのは1例,上縦隔を含めた2領域郭清を行ったのは2例であった.sm癌4例, mp癌4例と比較的早期に発見されており計8例の5年生存率は64%と良好であった.Barrett食道癌に対する手術術式を論議する際口側の切除線とリンパ節郭清の範囲が問題となる.欧米では開胸による拡大郭清は一般的でなく経裂孔的食道切除による局所リンパ節のみの郭清が通常行われているが,腺癌も含めて食道癌では壁深達度およびリンパ節転移の程度が予後に大きく影響すると考えられており,開胸による拡大郭清を指示する報告もある.一般的に下部食道癌の場合腹部転移が極めて高頻度であるとともに頸部転移も無視できない確率で存在する.これは下部食道がBarrett食道癌の好発部位であることを考慮するとBarrett食道癌の術式を選択する際非常に参考になると思われる.しかしBarrett食道癌は食道扁平上皮癌に比べはるかに症例数が少ないため,郭清範囲等術式に関する議論は十分には行われておらず標準術式と言えるものは未だに決まっていないと言える.欧米では内視鏡的サーベイランスの機会が多い症例では早期に発見される確率が高く予後も良好であるとの報告がある.
Barrett食道癌において良好な遠隔成績を得るためには,厳重な内視鏡的サーベイランスによる早期発見とともに,的確なリンパ節郭清を伴う手術が重要であると考えられるが,現段階ではBarrett食道癌に対する標準術式と言えるものは確立されていない.

キーワード
Barrett食道癌, 手術, リンパ節郭清, 内視鏡的サーベイランス, 遠隔成績


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