[書誌情報] [全文PDF] (1512KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 100(2): 216-219, 1999


特集

消化器癌術後再発例への対策と成績

7.転移性肺腫瘍・癌性胸膜炎の治療

秋田大学 医学部第2外科

小川 純一

I.内容要旨
消化器癌の肺転移に対する外科治療の適応と癌性胸膜炎の治療について最近の報告例から概略した.食道,胃,肝,胆道,膵からの肺転移切除例は極めて少なく,その適応に関しては疑問である.大腸,直腸癌からの肺転移切除例は多く,術後成績は5年生存率が24%から43%,10年生存率でも20%から34%という良好な結果が得られている.有意の予後因子では転移個数を指摘するものが多く,その他転移巣が完全切除できたか否か,転移巣の最大腫瘍径,開胸時の血中CEA値,原発巣切除から肺転移までの期間,リンパ節転移の有無肝転移・局所再発の既往など様々な因子が挙げられ,一定のコンセンサスは得られていない.今後はこれらの因子を中心にprospective studyが必要と思われる.癌性胸膜炎の治療は主にQOLの向上を目指したもので,ドレナージによる排液に加えて胸腔内への抗癌剤,胸膜癒着剤注入などの保存的治療で胸水のコントロールがある程度可能である.IL-2,インターフェロンなどのサイトカイン注入療法も試験的に試みられている.最近は侵襲の少ない胸腔鏡下手術が積極的に行われるようになり,QOLの向上に加えて生存期間の延長が計られている。

キーワード
転移性肺腫瘍, 癌性胸膜炎, 消化器癌, 手術適応


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。