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日外会誌. 100(2): 206-210, 1999


特集

消化器癌術後再発例への対策と成績

5.大腸癌術後再発の治療と成績

帝京大学 医学部第1外科

小平 進

I.内容要旨
大腸癌治癒切除後の生存率は比較的良好であり,5年生存率は結腸癌で80%前後,直腸癌で75%前後である.しかし,逆にいえば,治癒切除例の30%前後に何らかの再発をみていることになる.
大腸癌術後の再発形式としては,結腸癌では肝転移再発,直腸癌では骨盤内局所再発および肝・肺転移再発が主なものであり,進行癌でのそれぞれの再発率(5年累積)は10~20%位である.
これらの再発巣に対しては根治を目的として積極的な外科的切除術が盛んに行われ,肝転移巣の治癒的切除術では30~40%前後の5年生存率が,また,肺転移巣切除でも35~45%の5年生存率が得られている.更に,直腸癌術後の骨盤内局所再発に対しても,仙骨合併骨盤内臓全摘術を中心とした切除術にてやはり30~40%の5年生存率が得られている.このような再発巣切除後の良好な成績は,本疾患全体としての予後の向上に大きく貢献している.
一方,切除不能な再発巣に対しては,種々の化学療法,放射線療法にて,患者のQOLを低下させる愁訴の軽減,更には延命を目的として積極的な治療が行われ,とくに,肝転移に対する抗癌薬の持続肝動注療法は70%以上の奏効率と延命効果をも得ているものもあり,注目されている.
現時点で再発巣に対する対策として重要なことは,原発巣切除後の綿密な経過観察により,根治的再切除可能な状態で再発巣を早期に発見する努力をすることと,再発巣の治療に関しては根治性と患者のQOLを常に念頭においた集学的治療を行うということである。

キーワード
大腸癌術後再発, 肝転移, 骨盤内局所再発, 肺転移, 再発巣切除

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