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日外会誌. 100(2): 191-194, 1999


特集

消化器癌術後再発例への対策と成績

2.肝細胞癌

京都大学 医学研究科消化器外科

猪飼 伊和夫 , 佐藤 誠二 , 飯室 勇二 , 山本 成尚 , 山本 雄造 , 森本 泰介 , 嶌原 康行 , 山岡 義生

I.内容要旨
肝細胞癌の術後再発の多くは肝内再発として発生する.肝内再発の様式として,主腫瘍からの肝内転移と,肝炎に起因する異時性多中心性発生がある.現況では多中心性発生と肝内転移を厳密に区別することはできないが,再発高分化型肝細胞癌の多くは多中心性発生とみなしてよいと考えられている.比較的早期の肝細胞癌では背景肝病変が高度になるにしたがって再発率が高くなり,多くは異時性多中心性発生と考えられる.一方,進行肝癌では背景肝病変にかかわらず早期から肝内転移の頻度が高い.また,長期生存者においても一定の割合で肝内再発が認められるため,長期にわたる術後のフォローアップは極めて重要である.多中心性発生と考えられる場合には新たな発癌とみなし,初発病変と同じ方針で治療を進める.再肝切除においては,腫瘍条件が初回手術時と同じであったとしても術後経過とともに肝機能が低下しているため,系統的肝切除が行えないことが多い.再肝切除の適応とならないときには,腫瘍数,腫瘍存在部位,腫瘍濃染の有無により経皮的エタノール注入療法,マイクロウエーブ凝固療法,肝動脈塞栓療法などを選択する.再発形式はさまざまであり,ひとつの治療法が無効と判断されたときには別の治療法を試みる必要がある.一方,発癌の予防には活動性肝炎の抑制が重要性である報告されており,ALT高値例には異時性多中心性発生の予防として肝庇護療法も合わせて行う必要がある.

キーワード
肝細胞癌, 肝内転移, 多中心性発生, 再肝切除, 再発予防

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