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日外会誌. 100(2): 185-190, 1999


特集

消化器癌術後再発例への対策と成績

1.食道癌

九州大学 医学部第2外科

佐伯 浩司 , 川口 英俊 , 荒木 貢士 , 大野 真司 , 杉町 圭蔵

I.内容要旨
近年,食道癌の治療成績は格段の進歩を遂げたものの,治癒切除後の再発症例は少なくなく,再発症例に対する治療法の確立が今後の重要な課題といえる.教室の食道癌治癒切除症例116例中33例(28.4%)に再発を認めているが,再発形式としてはリンパ行性再発が18例(54.5%)と最も多く,その他血行性再発4例(12.1%),局所再発4例(12.1%),吻合部再発1例(3.0%),複合性再発6例(18.2%)であった.また,再発例33例中18例(54.5%)が術後1年以内,12例(36.4%)が術後1年から2年以内,3例(9.1%)が術後2年から3年以内に再発を認めた.治癒切除症例を術後無再発群(n=83)と再発群(n=33)とに分け比較したところ,再発群では初回手術時のリンパ節転移度が高く(p< 0.005),stageが進行していた(p<0.05).各再発形式別にその治療法について考察すると,リンパ行性再発の中でも頸部にのみ限局し他の複合再発が合併していない症例では,外科的切除や放射線照射などで局所の根治性が得られる可能性があるが,縦隔や腹部の症例は限局性であっても摘出が困難であるため,外科的切除の適応となることは少ない.一方血行性再発の場合,多発性血行性再発やリンパ行性再発との複合性再発として発見され治療が困難であることが多いが,原発巣が完全に制御されており,他に再発巣を認めず,全身状態良好な症例であれば,外科的切除や抗癌剤の肝動脈注入などの局所療法を考慮に入れるべきであろう.再発食道癌は治療抵抗性であり,その治療成績も十分ではない.今後,その治療成績向上のためには,基礎的研究も踏まえた新たな治療法の確立が必要である。

キーワード
進行食道癌, リンパ行性再発, 血行性再発, 再発予知因子


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