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日外会誌. 99(12): 842-845, 1998


特集

開心術における低侵襲的アプローチ(MICS)の現況と展望

8.小児における胸骨部分切開による開心術

福島県立医科大学 心臓血管外科

岩谷 文夫 , 星野 俊一 , 小野 隆志 , 高橋 皇基

I.内容要旨
主に美容上の理由から小児開心術に縮小皮膚切開,胸骨部分切開(partial median sternotomy 以下PST)を採用し良好な結果を得ているので報告する.1997年6月1日より1998年9月30日までに行ったPSTによる小児開心術は24例(41%)であった.年齢は平均4.3±3.1歳で,体重は平均16.0±9.3kgであった.疾患別では,VSD13例, ASD 9例,部分型ECD 1例, DORV+SV+MA 1例であった.術式別では, VSD閉鎖術13例,ASD直接閉鎖術9例, ASD 一次孔閉鎖+僧帽弁修復1例,ASD作成+PAB 1例であった.24例中17例は経右心房,6例は経肺動脈,1例は経右心室にてアプローチした.皮膚切開は第3肋骨の胸骨付着部の高さよりはじめ尾側縁は剣状突起の高さとした.胸骨切開は剣状突起より頭側は胸骨体にて止めるようにした.PSTにおける皮膚切開長は平均8.6±2.0cmで皮膚切開長(cm)/身長(m)は平均8.9±1.2であった.新生児の1例を除き,気管カニューレは,全例術後3時間以内に抜管し,ICU滞在期間は全例24時間以内であった.16例(67%)が無輸血にて経過した.生後4日の新生児例を術後16日,低心拍出量症候群にて失ったが,他の23例に関しては,術後経過は良好で創感染もなく全例元気に退院した.PSTによる小児開心術は,単純な心奇形に適応は限られるが,特殊な器具を必要とせず,美容上もほぼ満足すべき結果が得られた.又術前の大動脈造影より算出した胸骨と大動脈の位置関係を表すSternotomy index(STI)は, PSTを行う際の参考になる指数と考えられた.

キーワード
縮小皮膚切開, 胸骨部分切開, 小児開心術

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