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日外会誌. 99(12): 817-820, 1998


特集

開心術における低侵襲的アプローチ(MICS)の現況と展望

3.僧帽弁膜症における低侵襲手術
-胸骨右側部分切開法を用いた僧帽弁形成術-

(財)日本心臓血圧研究振興会附属榊󠄀原記念病院 外科

加瀬川 均

I.内容要旨
僧帽弁膜症に対する手術は大動脈弁と比較して視野展開が容易でなく,また手術自体も弁形成術が多いためより複雑で,小切開で行う手術には賛否両論がある.Carpentier,Chitwoodらは視野を確保するため内視鏡とビデオイメージングシステムを用いた低侵襲手術を行っているが,一方Cosgrove,Gundryらは直視下で小切開による僧帽弁手術を行っている. 著者らは胸骨右側部分切開(オープンドア法)を考案しこれを用いて僧帽弁直視下手術を行っているが,今回「良好な視野展開」が手術の完成度に最も影響すると思われる僧帽弁形成術における50例の経験を報告する.
1997年5月以降1998年10月まで連続62例の高度の僧帽弁閉鎖不全症症例のうち,本法の適用が手術の安全性と完成度に影響しないと考えられた50例にこれを試みた.10例(20%)は良好な視野の展開が不可能なために本法の適用を中止した.よって全体の64.5%の40症例に本法による僧帽弁形成術を行ったわけであるが,これらについて手術死亡はなく合併症も少なく,僧帽弁形成術の施行率,成功率(術中経食道エコー評価)ともに100%と結果は良好であった.
胸骨右側部分切開法(オープンドア法)を用いた僧帽弁形成術は適応を慎重に行うことにより,手術の質を落とすことなく安全に行うことが出来る.僧帽弁形成術の完成度は術後のQOLに大きく影響するので,個々の症例の解剖学的特徴などにより「良好な視野の展開」が困難な場合は,速やかに従来の正中切開法等に変更することが肝要と思われた.また十分な視野が得られるかどうか術前に予測するために胸部CT検査は有用であり,上行大動脈の位置の深いものは十分な視野が得られない可能性が高いと考えられた.

キーワード
僧帽弁膜症, 低侵襲手術, 僧帽弁形成術, 胸骨部分切開

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