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日外会誌. 99(12): 810-816, 1998


特集

開心術における低侵襲的アプローチ(MICS)の現況と展望

2.低侵襲心臓手術(MICS)における基本的アプローチとその選択

慶應義塾大学 医学部外科

四津 良平 , 申 範圭 , 前原 正明 , 川田 志明

I.内容要旨
現在,多くの外科領域において,患者に優しく,侵襲が少なく,術後の回復の早い,手術が行われるようになった.心臓の手術にも低侵襲手術が臨床の場に導入されるようになった.我々が積極的におこなっている低侵襲心臓手術,Minimally lnvasive Cardiac Surgery “MICS”のなかで弁膜症を中心としたMICSの基本的アプローチについて記した.MICSにおける小切開創からの円滑な手術操作には,伝統的な胸骨正中切開の開心術の習得後に新たなlearning curveがある.それに加え,どのアプローチを選択するかが手術の良否を決める大きな因子になる.MICSの基本的アプローチには,大きく分けて“胸骨小(部分)切開”によるものと,右傍胸骨切開法やPort-AccessやChitwoodに代表される“小開胸”によるものとがある.僧帽弁の手術にCosgroveが右傍胸骨切開法を報告して以来,各種の胸骨小切開法が報告されており,現在大きく8通りのアプローチがある.最適なアプローチの選択は,画一的には決定できず,個々の症例で異なる.そしてそれらの採用される頻度は,時代とともに変遷している.現在著者がアプローチを決定するのに参考としている術前の諸検査は,〔胸部X-P〕,〔大動脈CT〕,〔血管造影〕である.最適なアプローチで行われたMICSは,患者の精神的な満足感を含めたQOLの向上と迅速な社会復帰を促進する.今後MICSにおける工学的支援が数多く開発され,より広く低侵襲の心臓手術が行われ,徐々にMICSがより標準化して行く事が期待される.
医療における治療法の低侵襲化は医学的必然であると同時に,社会的要請であるとも言える.

キーワード
低侵襲心臓手術, Minimally invasive cardiac surgery, MICS, QOF, Port-Access

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