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日外会誌. 99(11): 770-775, 1998


特集

臓器移植の今後の展望

7.膵臓移植の現況と展望

筑波大学 臨床医学系外科

深尾 立

I.内容要旨
同種膵臓移植(以後PTxと略す)の成績はCYA期に入り他の臓器移植に並び症例も増えている.1997年末までに世界で10,283回行われ,1996年以降は毎年1,000例以上行われている.その75%近くが米国症例で,膵腎同時移植(simultaneous pancreas and kidney transplantation:SPK)が88%,腎移植後膵移植(pancreas transplantation after kidney transplantation:PAK)は10%,膵単独移植(pancreas transplantationalone:PTA)が2%行われている.1994年以降移植患者の1年生存率は90%を越え,移植膵1年生着率は最も良好なSPKで82%,3年でも80%近い.PAKとPTAの移植膵1年生着率は前者で71%,後者で62%である.免疫抑制剤のFK506とMMFは成績向上に有用である.技術的失敗は減少しつつあるが,グラフトの血栓症が最も多く,次いで膵炎/感染,吻合部縫合不全,出血と続く.その発生率はSPK-BDが最も低く8%,SPK-EDは11%であった.
標準術式は膵液膀胱ドレナージ法(BD)であったが,最近は生理的な腸管ドレナージ(ED)法が増えている.さらに生理的な静脈血門脈系還流法とEDを組み合わせた術式の良好な成績は将来の標準法となる可能性を示している.
PTxの主目的であるIDDM患者のQOLの改善効果と,DM合併症の進行阻止効果は認められているが,今後統計学的に確認できる研究計画が望まれている.DM合併症の予防目的の移植に進むにはPTAの成績が一段と向上せねばならないが,そのためには拒絶反応早期診断法の開発が必要である.
日本では15例のPTxが行われたが1994年以降は中止され,現在PTxのルールづくりが進められている.

キーワード
インスリン依存性糖尿病 (IDDM), 膵臓移植, 膵腎同時移植, 膵液膀胱ドレナージ法, 膵液腸管ドレナージ法


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