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日外会誌. 99(10): 711-716, 1998


特集

胆嚢癌治療-最近の動向

5.胆嚢癌に対する肝切除範囲

横浜市立大学 医学部外科学第2講座

遠藤 格 , 瀧本 篤 , 藤井 義郎 , 関戸 仁 , 渡会 伸治 , 嶋田 紘

I.内容要旨
胆嚢癌の肝内への進展形式には主腫瘍からの連続的な直接浸潤だけでなくリンパ行性,血行性の転移および肝門からグリソン鞘に沿った浸潤経路がある.胆嚢静脈は胆嚢頸部に向かって走行し直接方形葉の肝実質または総胆管周囲の血管網に合流するものと,肝床から直接肝実質に入り門脈・肝静脈に流入するという2つの経路がある.胆嚢静脈の門脈流入部位は肝右葉のみ4割,肝左葉のみ2割,両葉4割とされ,肝転移巣存在部位との類似性により血行性転移が優位であると考えられている.
ss癌の潜在的肝転移に対するS4a+5切除が肝転移再発を予防しうるか否かは未だ明らかではないが,肝床切除では切離面近傍の再発例がみられることと微小肝転移巣の7割がS4a+5領域に認められることより,S4a+5切除が妥当であると思われる.肝転移と脈管侵襲に相関関係が認められたため,脈管侵襲陽性例では術後肝動注などの集学的治療を試みるべきである.
肝床浸潤型ではリンパ節転移がなければ長期生存例もみられ,拡大肝切除は意義あるものと思われる.教室の全割標本の検討では,腫瘍から2cm離れた部位まで微小肝転移巣が認められた.再発形式は残肝の多発肝転移が多いため,術後肝動注療法が必須と思われる.
肝門型ではグリソン鞘に沿ってリンパ管侵襲や神経周囲浸潤などの間質浸潤の形で進展するため拡大右葉+尾状葉切除が必要である.これは肝門浸潤により黄疸をきたした胆嚢癌の長期生存が右葉または右三区域切除例に限られることからも明らかである.今後の課題は門脈塞栓術などによる,黄疸肝に対する拡大肝切除の安全性の確立である.

キーワード
胆嚢癌, 胆嚢静脈, 肝切除, 微小肝転移

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