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日外会誌. 99(9): 569-574, 1998


特集

噴門部早期癌の治療

7.噴門部早期癌の外科治療とくに噴切後再建術の新しい工夫

大分医科大学 第2外科

野口 剛 , 内田 雄三 , 橋本 剛 , 武野 慎祐 , 唐原 和秀 , 久保 宣博

I.内容要旨
胃上部・噴門部の早期癌に対して噴門側胃切除術(噴切術)は合理的な術式である.リンパ節郭清はNo.1,2,3,4s,7の郭清で十分であり,術前,術中所見としてこれらのリンパ節に明らかな転移がみられるものは噴切術の適応外である.
胃切除量としては,噴門側1/2が切除されるので,境界明瞭な単発性の早期癌が適応となる.ow, awともに陰性であるためには癌辺縁部から切除線まで2cm以上離すべきである.
再建術式の要点は残胃容量の減少と逆流性食道炎の防止である.逆流防止機構の再建方法としては,逆流防止弁の形成と,間置したsingle空腸の蠕動運動を利用する方法とに大別され,教室ではこの両者を兼ね備えた空腸間置術を施行してきた.1994年以後は残胃内圧の緩衝能の保持と逆流性食道炎の防止を目的として,症例を選んで,逆流防止弁つき二重空腸嚢間置術を施行し良好な成績をえた.
術式の要点は,Treitz靭帯より約25cmの部位で空腸を切離し,結腸後に挙上し,食道と端側吻合を行う.食道吻合部から肛門側へ15cmをsingle lumen空腸とし,さらに肛門側へ10cmの部分で空腸を並列し,その遠位側5cmで中隔を切開し,二重空腸嚢(pouch)とする.二重空腸嚢遠位端と残胃口側端とを手縫い結節縫合で端々吻合を行う.噴門部郭清を行った症例では幽門形成術を付加し,迷走神経を温存した症例では幽門形成術を付加しない.本術式は術後X線検査,内視鏡検査,および食道・間置空腸内pH24時間測定の結果から有用な術式であることが示された.

キーワード
噴門部早期癌, 噴門側胃切除術, 二重空腸嚢間置術, 逆流防止弁つき

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