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日外会誌. 99(8): 528-532, 1998


特集

臓器不全の病態と対策

10.臓器不全のクリティカルケア

千葉大学 医学部救急医学

志賀 英敏 , 平澤 博之

I.内容要旨
1988年から98年4月までに当ICUに入室した外科系MOF症例141例を対象に, MOF症例に対して施行したクリティカルケアにつき検討した.
原疾患別に分類すると消化器外科系症例が最も多く,続いて心血管外科系症例であった.
これらMOF症例の,平均臓器不全数は3.13で,特に肺と腎の頻度が高く78.0%で,次いで心が61.0%であった.
栄養管理は94.3%が静脈栄養であり,静脈栄養と経腸栄養を併用した症例はわずか5.7%であった.また,bacterial translocation対策としてselective digestive decontamination(SDD)を施行した.
不全臓器に対する人工補助療法としては呼吸不全138例(97.9%)に対しventilatorを使用し,6例(4.3%)に対しpercutaneous cardio pulmonary support(PCPS)を施行した.腎不全に対しては,98例(69.5%)に対し持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration:CHDF)を施行した.また肝不全に対し肝補助療法として血漿交換(plasma exchange PE)を13例(9.2%)に施行した.これらMOF症例141例のうち62例(44.0%)を救命した.
輸液管理の指標に,膠質浸透圧(colloid osmotic pressure:COP)を用いた. Bacterial translocationの問題に対する対策として,SDDを施行している.呼吸不全に対しては,ventilatorを用い,不十分な症例に対しては,PCPSを施行している.
臓器不全に対するクリティカルケアにおいて,種々の人工臓器が用いられているが,なかでも腎不全を伴う重症患者の腎補助として広く用いられているCHDFは,腎補助以外にも種々の効果が期待でき,循環動態の不安定な重症症例に対しても安全に施行可能で,MOF症例に対するクリティカルケアにおいて,第一選択の血液浄化法となっている.
臓器不全に対する,人工補助療法を含めた集学的なクリティカルケアは,これら症例の救命に必要不可欠のものとなっている.

キーワード
多臓器不全 (MOF), 持続的血液濾過透析 (CHDF), selective digestive decontamination (SDD), colloid osmotic pressure (COP), percutaneous cardio pulmonary support (PCPS)


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