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日外会誌. 99(8): 523-527, 1998


特集

臓器不全の病態と対策

9.敗血症と臓器不全-その病態と対策

滋賀医科大学 第1外科

花澤 一芳 , 小玉 正智

I.内容要旨
敗血症においては局所における感染に対して炎症反応が起こり,生体防御能と相まって炎症反応が持続あるいはその程度が一定の範囲を越えると過剰に産生されたサイトカインや種々のケミカルエディエーターが全身反応をひき起こす.更に局所感染巣より血中に菌体成分,エンドトキシンやこれらにより誘導された過剰なサイトカイン,アミン,プロスタグランディン,ペプタイド,補体成分,NOが敗血症性ショックを誘発する.更にこれらの全身炎症反応のくり返しや遷延化が臓器障害に進展する.敗血症(エンドトキシン血症を含む)の対策として上記のサイトカインやケミカルメディエーターばかりでなく,これらの病態を惹起する細菌成分や毒素対策とりわけ抗エンドトキシン対策が重要である.敗血症患者における抗生物質投与によるエンドトキシン放出も決して無視できない病態のひとつである.ある種の抗生剤は溶菌時に大量のエンドトキシンを放出する事が判明している.同時に血中エンドトキシン濃度と一致して血圧の低下,血中乳酸値の上昇がおこる.この事は抗生物質の種類の選択の重要性を示すものである.モノクローナル抗エンドトキシン抗体(E5,HA1-A)は予想に反しヒトでの効果は証明できなかった.この理由として臨床前の大型動物による検討が為されていなかったことや,in vitroにおける抗体価が劣っていたことが挙げられる.その他の抗エンドトキシン療法としてBPI, ENPや抗エンドトキシン物質(E5531)が今後可能性のある治療薬として検討されている.他方体外循環によるエンドトキシン除去(PMX治療)は血中エンドトキシン濃度減少,これに伴う発熱の抑制,循環動態の改善,血液ガスの改善,血中サイトカイン他の改善を認めた.敗血症や多臓器障害(MODS)が本質的に症候群である事を考えると,現在可能な治療法を駆使し,患者個々の病態に即した予防とその対応がなされるべきである.

キーワード
臓器不全, 敗血症, エンドトキシン , ポリミキシン固定化繊維, PMX

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