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日外会誌. 99(8): 518-522, 1998


特集

臓器不全の病態と対策

8.手術と臓器不全-その病態と対策

昭和大学 医学部第2外科

村上 雅彦 , 村井 紀元 , 草野 満夫

I.内容要旨
臓器不全にいたる機序が,SIRS, CARSの概念の導入により理解され易くなり,これに関する各種メディエーターの相互のネットワークが明らかとなった.それに伴ない,手術侵襲も高サイトカイン血症という視点から捉えられるようになり,術後臓器不全は臓器をtargetingとした治療から,過程を重視した治療に変わりつつある.術後のSIRS, CARSの重症度を的確に把握することにより,臓器不全への移行を早期に予測することが肝要である.肝切除における術後肝不全の多くは,術前の残存機能評価に基づく手術侵襲の縮小が最大の予防であり治療につながり,過少機能評価,過大手術侵襲がprimary MOFの原因となる.術後感染症が誘因とされるsecondary MOFは,消化管術後の縫合不全・膿瘍に起因する腹膜炎に代表されるが,腸管粘膜バリアー破綻によるbacterial translocationも重要なfactorとなっている.早期のドレナージや手術中の腸管愛護とともに,いかに高サイトカイン血症を改善するかがkey pointとなる.現時点では,抗メディエーター療法として実用化されているものはCHDFのみといっても過言ではなく,予防対策を行うに尽きる.また,術後のSIRSの重症化を早期に察知することも大切であり,さらにSIRSの持続遷延,再陽性化など,血中IL-6を中心としたサイトカインをモニタリングすることも臓器不全を重篤化させないためにも必須な方法となろう.
今後,各種メディエーターの生体調節機構がより詳細に解明され,抗メディエーター療法による微妙なコントロールが可能となり,臓器不全がrecovery可能な術後合併症となることを期待する.

キーワード
臓器不全, 手術侵襲, 術後感染症, 縫合不全, 高サイトカイン血症

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