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日外会誌. 99(8): 504-509, 1998


特集

臓器不全の病態と対策

6.臓器不全におけるエンドトキシンとその結合蛋白

三重大学 医学部第1外科

臼井 正信 , 川原田 嘉文

I.内容要旨
広範肝切除後などの高度侵襲後の臓器不全ではbacterial translocationによるエンドトキシン(lipopolysaccharide:LPS)の感染が密接に関与し注目されている.門脈血中に侵入したLPSは, LPS結合蛋白(LBP)に結合し,肝類洞内の単球およびクッパー細胞に運ばれ,その細胞膜上に存在する,あるいは血漿中に存在する可溶性CD14を介して活性化する.LPS-LBP複合体によって活性化された単球およびクッパー細胞から炎症性サイトカインであるTNF-αやIL-6などが産生放出される.この炎症性サイトカインによって類洞内皮が傷害されるのである.傷害された内皮細胞は本来の機能としての抗凝固機能が低下し,微小血栓形成による微小循環不全を引き起こす.そのネットワーク機構を理解し,侵襲を阻止する事が大切であり,この点で最近LBPおよびCD14に注目が集まっている.
高度侵襲である広範肝切除では,LPSの増加は,術後3時間から起こり,6時間をピークとしているが,LBPは主に門脈周囲の肝細胞でこのLPSの侵入を待ちかまえており12時間をピークに産生され,炎症性サイトカインの過剰産生につながる.侵襲によるLPSの侵入を未然に防ぐことは困難であり,また炎症性サイトカインが放出された後では遅いため,この過剰反応を抑制するためには,12時間以内にLBPの発現を抑制する必要があり,今後の検討課題である.

キーワード
広範肝切徐, 術後臓器不全, エンドトキシン (LPS), LPS 結合蛋白 (LBP)

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