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書誌情報]
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日外会誌. 99(8): 490-496, 1998
特集
臓器不全の病態と対策
4.炎症メジエータと臓器不全
I.内容要旨外的侵襲に対する炎症反応を誘発する伝達物質(炎症メジエータ)には,エンドトキシンや,そのメジエータであるサイトカイン(インターロイキン,TNF,インターフェロン),エイコサノイド(プロスタグランディンやトロンボキサン,ロイコトリエン),活性酸素種(O
2-,OH, NO, ONOO
-など),補体系因子(C3,C4など),侵襲ホルモン(カテコラミンやコルチゾール,ADH,成長ホルモンなど)などがある.これらのメジエータは互いに誘導,産生促進と作用増強のほかに,産生抑制,作用拮抗など複雑な連鎖反応(カスケード反応)を行い,一過性の組織破壊ともいうべき炎症反応を経て,生体機能の恒常性保持(ホメオスタシス)の作用を司る.すなわち,炎症から回復するためには,ETX, TNF-α, IL-1,-8などの炎症メジエータは,自身が持ち合わせる抗炎症作用のほかに,IL-10,-4,-11,-13, TGF-β, IL-1Ra, sTNFRなど抗炎症メジエータを産生するというネガティブフィードバック機構によって,その反応は沈静化する.しかし,この一連の反応過程で,過大侵襲や侵襲再来(second attack theory)により,狭義の炎症メジエータが抗炎症メジエータに比べ過剰に産生された場合には,炎症細胞の活性化による組織破壊や内皮障害によるネクローシスが生じ,生体機能の恒常性維持は困難となり,臓器障害,臓器不全を引き起こす(SIRSからのMODS,MOF).過大肝切除後の肝不全発症実験では,高サイトカイン血症,ONOO
-の産生が持続し,肝細胞ミトコンドリア膜電位の低下,Bcl2の著明な低下からアポトーシスが誘導される.一方,抗炎症反応(CARS)が過剰となっても,免疫能低下から難治性の感染症によって,進行性,不可逆性の臓器障害が生じる(CARSからのMODS, MOF).
外傷,手術,感染,虚血などの侵襲が生体に加わると情報伝達物質(メジエータ)を介して炎症反応が生じる.炎症反応は,本来,外的侵襲に対して内部環境を回復し,生体の恒常性を保つための生理的反応である.炎症反応を惹起,制御するメジエータを炎症メジエータと呼称するが,この炎症メジエータが過剰に発現したり長期間持続すると臓器障害を生じるとされている.本稿では,主な炎症メジエータの種類と炎症メジエータとホメオスタシス,炎症メジエータと臓器不全について述べてみたい.
キーワード
エンドトキシン, サイトカイン, 活性酸素種, 過大肝切徐, 肝不全
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