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日外会誌. 99(7): 452-456, 1998


特集

大腸癌:浸潤・転移の基礎と臨床

11.大腸がん組織における宿主反応と浸潤・転移との相関

東北大学 医学部第2病理 (病理形態)

大谷 明夫

I.内容要旨
ヒト癌の生物学的態度は遺伝子異常を基盤とした癌細胞側因子と宿主の反応因子により既定されているとみなされている.今回宿主の炎症・免疫系反応に着目して,大腸がんの進展との相関をさぐった.大腸がんの先進部(tumor-host interface)に分布するマクロファージはcostimulatory molecule B7を発現しており,その刺激をうけるTリンパ球と共存していた.両者のあいだの細胞間接着も確認された.これより,癌先進部での抗原提示が推測された.この癌先進部マクロファージは同時性肝転移を有する群で有意に少なかった.さらに高悪性度と目される原発巣の小さい同時性肝転移群ではさらに低値であった.このことから先進部に分布するマクロファージは癌の血行性転移に対して抑制効果を持つ事が推定された.また,抗原刺激をうけたあとエフェクターとなりうるCD8陽性リンパ球が癌細胞のあいだに浸潤した大腸がん例は生存率が有意に高かった.このことは腫瘍免疫系が存在し,癌の悪性度を減弱させていることを示している.以上大腸がんの進展に対して生体反応が働き,その進展を修飾していることが示された.癌の生物学的態度を解析するためには多方面からの解析が必要と判断される.

キーワード
大腸がん, B7-2, costimulatory molecules, マクロファージ, リンパ球

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