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日外会誌. 99(7): 436-440, 1998


特集

大腸癌:浸潤・転移の基礎と臨床

8.大腸癌肝転移における VEGF,MMPs の意義

京都大学大学院 医学研究科腫瘍外科学

有井 滋樹 , 石上 俊一 , 森 章 , 小野寺 久 , 今村 正之

I.内容要旨
大腸癌の転移,とくに血行性肝転移におけるVEGF, MMP-2,9, MT1-MMPの意義について我々の知見を述べた.66例の大腸癌の原発巣の切除標本の癌部(T),非癌部(N)よりmRNAを抽出し,ノザンプロットを施行し,発現度をインターナルコントロールで補正した後,T/N比として定量化し,肝転移,リンパ節転移,分化度,リンパ管侵襲,血管侵襲などとの関連性を検討した.さらに,VEGF蛋白,MMPs蛋白の局在を免疫染色にて検索した.VEGFmRNA発現度は同時性肝転移症例(n=15),リンパ節転移例において有意に高く,壁深達度(pm≧,pm<)も同様であった.
MMPsについては,いずれのMMPもそのmRNA発現度は同時性肝転移例にのみ有意に高値であり,他の臨床病理学的事項との有意な関連性は認めなかった.異時性肝転移4症例を含めた検討においても,VEGF, MMP-9, MT1-MMPのmRNA発現度は肝転移との有意な関連性を認め,これらは肝転移予知のマーカーになりうると考えられた.
これら分子の局在については,VEGF及びMT1-MMPは主として癌細胞, MMP-2は間質の線維芽細胞,MMP-9は癌細胞,線維芽細胞,好中球,マクロファージなどであり,癌細胞と間質系細胞のクロストークがうかがわれた.

キーワード
大腸癌, 肝転移, VEGF (vascular endothelial growth factor), MMP (matrix metalloproteinase)

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