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日外会誌. 99(7): 409-414, 1998


特集

大腸癌:浸潤・転移の基礎と臨床

3.大腸癌における接着分子CD44の発現と転移能における役割

福井医科大学 第1外科

山口 明夫

I.内容要旨
接着分子CD44はalternative splicing機構により多くのアイソフォームからなり,その中には癌の浸潤や転移に関与するものがあるといわれている.これらCD44分子の癌転移への役割については,癌細胞同士の接着,運動能,免疫機構への関与,血管内皮細胞への接着など種々の報告がみられる.私どももヒト大腸癌細胞株HT29mを用いた脾内注入マウス肝転移モデル実験にて,CD44 variant exon 9に対するモノクローナル抗体(mAb 44-1V)が肝転移を抑制することを確認した.さらにその機序解明を目的にin vitroでの接着実験をおこない,HT29mのMATRIGELへの接着能がmAb44-1Vによって抑制されたことより, CD44v8-10は大腸癌の肝転移において,初期の段階での肝の血管内皮への接着に関与している可能性が示唆された.一方大腸癌におけるCD44の発現と転移に関する報告もいくつかみられる.私どもは大腸癌切除標本を用いて,CD44 variant exon 8-10およびvariant exon6のRNA量を検索したところ,ともに肝転移症例においてその発現が高く,またこの両者の発現には正の相関がみられた.mAb 44-IVを用いた免疫組織検索にても,CD44v8-10蛋白陽性例ではリンパ節転移率,肝転移率が高く,治癒切除例での再発率も陰性例に比して有意に高く,その予後も不良であった.以上よりCD44v8-10蛋白の免疫組織学的検索は大腸癌の血行性転移マーカーならびに予後予測因子として有用であることが示唆された.

キーワード
大腸癌, 肝転移, variant CD44, 細胞接着分子


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