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日外会誌. 99(6): 385-390, 1998


特集

大腸癌発生予防の基礎と臨床

10.家族性大腸腺腫症患者の大腸ポリープに対する非ステロイド抗炎症剤の効果:その臨床成績について

1) 国立がんセンター中央病院 外科
2) 国立がんセンター中央病院 院長

赤須 孝之1) , 垣添 忠生2)

I.内容要旨
近年,実験大腸発癌抑制に種々の非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)が有効であること,複数の疫学的研究からアスピリンの長期服用が大腸癌の罹患リスクを減少させること,などが報告されNSAIDsによる大腸腺腫の治療および大腸癌の予防に期待が持たれるようになった.家族性大腸腺腫症(FAP)患者の大腸ポリープに対してもスリンダクやインドメタシンが経口または経直腸投与され,ポリープの縮小に有効であることが多数の臨床研究から示された.しかし,その効果は完全とはいえず,重篤な副作用を起こす可能性もある.また,大腸癌予防効果については十分な検討はなされていない.したがって,現時点でこれらのNSAIDsは結腸全摘や大腸全摘に替わる治療法ではない.しかし,COX-2-slective inhibitorを含むNSAIDsの中には真に大腸癌予防に有効な薬剤が存在する可能性もあり,更なる臨床的検討を要する.また,NSAIDsによる大腸ポリープ縮小の機序はまだ解明されておらず,これを解明することはFAPにおける大腸癌の予防のみならず一般の大腸癌の予防法の研究にも意義深い.

キーワード
家族性大腸腺腫症, 大腸癌, 大腸ポリープ, 非ステロイド抗炎症剤, 予防


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