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書誌情報]
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日外会誌. 99(6): 368-372, 1998
特集
大腸癌発生予防の基礎と臨床
7.食品成分による大腸癌の予防
I.内容要旨日本でも,大腸癌の発生が急激に増加している.その発生が人種的素因よりも環境因子,食生活の環境に大きく影響されている.食物繊維の摂取量の減少が疫学的に指摘され,食物繊維の大腸発癌抑制について研究されてきた.発癌イニシエーションの段階で環境中の発癌物質を取り除くことは不可能に近く,抗酸化作用の食品は遺伝子に傷がつく以前に摂る必要がある,プロモーションの段階での予防には10年以上を必要とする.大腸癌高危険群の糞便からは突然変異原物質が高率に証明され,特に高脂肪・高蛋白食で検出率が高い.逆に,高繊維食や野菜中心の食事,緑黄色野菜の多量摂取の人々では低い.水溶性食物繊維であり,短鎖脂肪酸量の増加と腸管内イオン交換作用のあるペクチンやオリゴ糖にも大腸癌予防が期待される.欧米型食事が大腸癌の発生を増加させる機構は,食事成分や内因性物質から腸内細菌によって発癌物質が生成されているか,発癌物質の無毒化が弱まっている可能性がある.肝臓でグルクロン酸抱合解毒された発癌物質が腸内細菌のβ-グルクロニダーゼによって脱抱合されるために再度腸肝循環し,発癌物質は摂取されたよりも数倍作用している可能性がある.NCIは1992年から“5 A Day”(一日に野菜5皿運動)計画を推進しているが,活性酸素抑制率からは野菜は煮て摂取すべきである.β-グルクロニダーゼを阻害するD-グルコ糖酸は体内で速やかにD-glucaro-1,4-lactoneとして代謝され,この物質がβ-グルクロニダーゼの活性を阻害し腸肝循環の減少をきたす.我が国では,石川らによる1993年からの小麦ふすま入りビスケットの投与介入試験があり,1997年6月までの登録における2001年6月までの研究期間の結果が待たれる.
キーワード
がん予防, 大腸がん予防, 食物繊維, 大腸癌
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