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日外会誌. 99(6): 336-344, 1998


特集

大腸癌発生予防の基礎と臨床

2.FAPとHNPCCの分子生物学的背景と治療

浜松医科大学 第2外科

馬塲 正三

I.内容要旨
FAPとHNPCCは共に代表的な遺伝性疾患であり腫瘍発生学上重要な疾患である.近年急速な分子生物学の進歩によりその原因遺伝子が明らかにされてきた.従って,治療に関しても新しい視点からこの両疾患を見直す必要がある.FAP, HNPCC共に優性遺伝性疾患であるが,FAPの原因遺伝子APC遺伝子は1991年に日米共同研究によりクローニングされた.その結果発症前診断が可能となった.一方,HNPCCの原因遺伝子としてはhMSH-2hMLH-1hPMS-1hPMS-2などが1993年以降相次いでクローニングされてきている.これらの遺伝子群は複合体を作りミスマッチ修復の機能を行っており,そのいずれかの遺伝子に異常が起こっても突然変異率は100倍から1,000倍増加するものと考えられる.また,なお未知の遺伝子の存在が疑われている.浸透率もまだ不明であり,HNPCCに関しては発症前診断はなお研究課題である.今後症例の集積と浸透率の算出が重要な課題である.
FAPの場合, genotypeによりポリープ数などの発現形質の違いがある事が明らかにされている.遺伝子情報がIRA, IACA, IAAなど術式選択の指標となりうる.HNPCCの場合,ミスマッチ修復遺伝子(MMR)の変異の解析には多大の労力と時間を要するが,MMRのmutator phenotypeであるRERは容易に検出可能であり,臨床的に第2癌の予知に有効である.FAP, HNPCCの遺伝子解析が一般大腸の癌発癌機構の解明に役立つ事が期待されている.

キーワード
APC 遺伝子, hMSH-2, hMLH-1, Replication Error (microsatellite Instability), FAP, HNPCC

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