[書誌情報] [全文PDF] (3253KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 99(5): 326-330, 1998


特集

呼吸器悪性腫瘍の最新の治療方針

9.悪性胸壁腫瘍手術における胸壁再建手術

長崎大学 医学部第1外科

綾部 公懿 , 岡 忠之 , 赤嶺 晋治 , 高橋 孝郎 , 永安 武

I.内容要旨
悪性胸壁腫瘍は原発性であれ,続発性であれ外科的切除が唯一の根治的治療法と考えられる.胸壁切除再建の対象となる悪性腫瘍には肺癌の胸壁浸潤例,乳癌術後胸壁孤立再発例,転移性胸骨,肋骨腫瘍や原発性胸壁腫瘍がある.胸壁とくに骨性胸壁は呼吸生理上重要な役割をはたすと共に胸腔内臓器の保護,体型の保持の役割を有している.胸壁の欠損は胸郭の変形をもたらすばかりでなく,胸壁動揺は奇異呼吸を起こし重篤な呼吸障害を惹起する.悪性胸壁腫瘍に対する胸壁切除は全層切除でかつ広範囲切除になり,従って胸壁再建が必要とすることが多くなる.近年呼吸器外科,形成外科領域での進歩ならびに各種合成人工材料の開発,筋弁,筋皮弁作成法の工夫により,あらゆる胸壁の部位のかつ広範囲の胸壁欠損に対してその再建が可能となってきた.骨性胸壁の再建にはある程度の支持力が必要なため合成人工材料が用いられ平坦な部位にはMarlex meshが,側胸部など弩曲面の再建にはMarlex meshとMethyl methacyrateのsandwich法が使用されることが多い.この他ポリエステルプレートなど新しい材料の報告もある.また皮膚軟部組織の補填には大胸筋,広背筋,腹直筋などの有茎皮弁あるいは筋皮弁が,再建部位や範囲,既往手術などを考慮して用いられ,この他有茎大網も被覆材料として有用である.
胸壁再建術は最近安全な手術となり,原発性,続発性胸壁腫瘍でも長期予後が得られるようになってきた.根治切除のみでなく胸壁腫瘍からの出血,潰瘍形成,感染例では遠隔転移があっても生活の質向上のため胸壁切除再建を行う意義はある.
本稿では悪性胸壁腫瘍切除後の胸壁再建の適応,再建材料,再建法を中心に最近の進歩を述べた.

キーワード
悪性胸壁腫瘍, 胸壁再建術, マーレックス・メッシュ, 筋皮弁


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。