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日外会誌. 99(5): 291-298, 1998


特集

呼吸器悪性腫瘍の最新の治療方針

3.小細胞肺癌では induction therapyが生存率を向上させうるか?

大阪府立成人病センター 第2外科

児玉 憲 , 土井 修 , 東山 聖彦 , 横内 秀起 , 高見 康二

I.内容要旨
小細胞肺癌(small cell lung cancer:SCLC)は,診断時,大半の症例はすでに遠隔転移を起こしていると考えられ,それゆえ,全身化学療法が治療の基本である.それらに対し感受性を示すが,局所や脳に再発する頻度が高く,胸部への放射線治療や予防的全脳照射(PCI)といった局所治療が併用されてきた.
それでも,なおかつ局所コントロールに限界がみられるため,adjuvant surgeryが併用される場合がある.その場合,induction therapyを先行すべきか,手術を先行すべきか,成績の面からは結論は得られていない.Stage I, SCLCに対しては,末梢発生の微小なものであれば手術単独で十分治癒するものと考えられる.しかし,それ以外のstage IとStage II, IIIaに対しては,腫瘍の性格を考慮した場合,化学療法,放射線療法,手術療法を組み合わせた“comprehensive therapy”が必要とする意見が多い.また,診断から治療開始までいたずらに時間を費やさないこと,stagingを徹底して行うことも重要である.
諸家のinduction therapyに関する報告をみると,対象例はstage II, IIIが大部分を占め,これは手術単独や術後化学療法に関する報告の対象症例の分布と比べるとより進行癌に偏る傾向がある.それゆえ,今後,背景をそろえてrandomized trialを行えば, induction therapyの有用性が示されるかもしれない.

キーワード
肺小細胞癌, induction therapy, limited disease, 局所コントロール, 外科治療

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